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こんばんは。塾長です。

江戸時代から雪踏直しは「なおしーなおしー」と発し、市中を歩いて廻っていましたが、昔も今も雪駄は高級品で庶民が普段履くものは下駄でした。

この絵の一番左に座っている人が雪踏直しの長五郎で、浮世絵だけに今の写真と同じくらい写実性が高く、細かい道具も正確に描かれています。
雪踏直し長五郎
江戸の雪踏直し長五郎の左手には前緒が切れた二筋花緒の雪駄、道具箱の中は金槌、くじり、大はさみ、ノコギリが見えます。足元は釘が入った容器が見えます。江戸の雪踏直しは「でいでい」と発し市中を廻り、大阪などは「なおしーなおしー」でした。ここでは江戸・大阪の区別はつけず「雪踏直し」「靴直し」と言う視点で書き記していきます。ちなみに真ん中の奴さんは阿古木源三郎と言う人物。「あこぎな野郎だよ!ったくよ!」の語源のあこぎさんです。

大阪と江戸の雪踏直しのスタイル。

2020.6.24追記
[大阪の雪踏直](原文)かくのごとく跡先を箱になしたるもあり。または前を箱。跡をたんすにこしらへたるもあり。前後ともにたんすばかりたるもあり。江戸と大いに異也。渡辺といふ処より出る。市中をあるくに直しゝといふ。

(現代語訳)図の様に前後を箱にするものがある。または前を箱で後ろを箪笥(たんす)型(きりやの文字の入った箱)にしてあるものもある。前後とも箪笥型もある。江戸とは大きく異なる。渡辺と言う所から出てくる。街中を歩きながら「直し直し」と言う。

[江戸の雪踏直](原文)かくのごときなりにて大阪とは大いに異なり市中をあるくにデイデイ引とよびてあるく。そは手を入れようといふことなるよしきけり。銀鶏按にデイデイは家にはいらず土間に居て直すと云ことにて泥居(デヰ)泥居と云義にあらずや。しばらく後人の説をまたん。

(現代語訳)図のような格好で大阪とは大いに異なり、街中をデイデイと言いながら歩く。「私は手入れをして直します」が短くなり、更に訛って「手入れ手入れ→ていれていれ→でいでい」と言うのでは無い。銀鶏按(本文献)はデイデイは家に入らないで泥で汚れている土間に居て直すから、泥居泥居=デイデイではないだろうか。そうに違いない。
2020.6.24追記

参考文献:平亭銀鶏 作 「浪花襍誌 街廼噂(まちのうわさ) 4巻. 秋」天保6 [1835] 
原文解読参考文献:畑中敏之 著/雪駄をめぐる人びと 近世はきもの風俗史

筆者所感
大阪の雪踏直しの愛嬌のある顔が良いです。私はどう考えても大阪の方の性格だと思います。
お笑い好きだし、さっぱりしてる。逆に江戸の方はスカシちゃってます。
2020.6.24追記 本稿を書いていて気付いたのですが、江戸の雪踏直しの立ち姿の足の八の字の揃え方が筆者製作の雪駄を撮る時の配置と同じで、全く意図していなかっただけに不思議な事もあるものだなと思いました。
2020.6.24追記


上の江戸の雪踏直しと下の浮世絵の長五郎の格好が同じです。
雪踏直し長五郎1
天を睨みつけるその眼(マナコ)が、いかにも歌舞伎の見切りを思わせます。
雪踏直し長五郎 (歌舞伎演目/夢結蝶鳥追より)


時は江戸時代からワープし、雪踏直し(雪駄直し)下駄直し、下駄の需要がなくなって「靴直し」に至り、そして路上の靴磨きが日の目を浴びる令和に突入します。


靴直しは大正半ば以降盛んになり、靴の普及に伴い下駄直しも兼ねながら、そして時代とともに靴直し専門にと言う人も現われ始めました。



以前、皮革関連の本を出している方からご連絡を頂き、何やらフランスかどこかの学会で雪駄塾からの情報を挟んで発表されるとの事で、「これで良い?」と、資料を沢山送ってくれました。ありがとうございます。前もって言っていただけたので気持ちが良かったです。

そして、その中に大変興味深い写真が載っていました。

こちらです。凄く古い、靴直しの道具箱と道具。
靴直し道具箱
何故、これが気になったかと言うと、私が雪駄を作る時の道具箱と似ているからです。
2020.6.24追記 先述した大阪の雪踏直しの図の道具箱の箪笥型の名残があります。2020.6.24追記

雪駄の作り方もそうでしたが、最終的に行き着く所は先人達と同じ工法とか道具になるみたいで、すごく時間がかかりましたが自分のやって来た事は間違っていなかったとホっとしました。

なのでこの道具箱とほぼ同じ物を使っているのが嬉しかったです。

「やっぱりこうなるよね」と。

道具については当初あれもこれもと沢山持っていましたが、次第に厳選されていき、また自分で作ったりして洗練され、振り返ると随分と少なくなったなぁと思います。

いかに無駄な物が多かったか。
私は部屋で作っていますが、行商するなら尚更です。

持ち物もそうですが、余計なものを一切持たない主義なので逆に削りすぎていざという時「あ!持って来てない!!」なんて困った事もありました。


靴直し

靴直しの方のお写真。なんとも素敵なスタイルでカッコいいです。
靴直し

そう言えば靴磨きの本を買いました。今でこそ路上の靴磨きの方達は、その人本人の努力もあり、また時代もあり、日の目を浴びテレビでも特集を組まれていますが、そのお仕事の源流は雪踏直し/下駄直し~靴直しだったのです。

おそらく大正年代の大阪の路上履物直しの道具箱。車輪がついていて移動に便利。

2020.6.24追記 先述した大阪の雪踏直しの図の道具箱の箪笥型の名残があります。2020.6.24追記


「お洒落は足元から」「足元見られる」 

私も雪踏師の端くれとして雪駄を作っているのでやはり足元に目が行きます。上物(上着など)が良くても靴が駄目だったら全部駄目に思えてしまい、逆に靴が良いと「何者だ!?」と言う具合に想像を膨らませ、その人まで良く見えてしまいます。

最後にこちらです。①綱貫沓(つなぬきくつ、つらぬきくつとも呼ぶ)
綱貫道具
この靴(沓)は農業や山の仕事をする人が履いた皮で出来た靴で非常に丈夫で便利であった。しかし、ゴム靴、地下足袋などの普及により昭和初期ぐらいには姿を消していった。

雪駄考54:なおしーなおしー、下駄直しー、靴直しー 2020.4.3 以上

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雪駄塾 塾長

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